大阪学 交通編

いま、大阪の帝塚山学院大学の教授をされていた大谷晃一さんの「大阪学」という本を読んでいるんですが、なかなか面白くて、シリーズ化されてロングセラーにもなっています。そこには、女子大生たちが書いてくる「大阪学ウォッチング」というミニレポートも使われていて、女子大生目線で見た大阪も書かれています。元々は、帝塚山学院大学で1988年から6年続いた講座がベースになっていて、様々な切り口から大阪が語られています。大阪に住んでいる私にとっては身近な話が満載なので楽しく読んでいます。
講座が設けられた背景には、大学の文科系の講義が現代社会に適用されず、学生の関心が低いという問題意識があり、その理由は、現在の学問があまりに縦割りで細分化し専門化しすぎていることが挙げられます。大阪という街を語るためには無数の知識や学問が必要で、まとめるには難しかったそうですが、昨今、よく学際という言葉がもてはやされている通りに、専門化しているいろいろな学問の壁を縦横無尽に取り払って語られているので、時代にあった「学」と呼べるかもしれません。
いろんなトピックで語られる大阪ですが、今回は違法駐車を話のきっかけとした大阪の交通の話をしてみたいと思います。
大阪の違法駐車を語るうえで外せないのがこの動画。

平成5年4月とデータとしては古いですが、東京との比較でいうと、東京都の違法駐車が14万台なのに対して、大阪府は24万5千台と圧倒的な数で、違法駐車は大阪名物ともいえるのかもしれません。こういう現実に対して、市民もあまり苦情を言わないし、問屋街などは、取り締まりが商売の邪魔だとも言うそうです。よく違法駐車追放のキャンペーンがされますが、一向に改善されていません。「駐車場がない」という声もある一方で、駐車場はガラガラなのに、周りの道路に駐車があふれている光景をよく目にします。とくに、五・十払いという商習慣が大阪には残っていて、五・十日と呼ばれる毎月5日と10日はさらにひどくなります。では、大阪ではなぜそうなるのかの説明として、「大阪学」では、駐車違反は善悪ではなく損得であるという考えが大阪人の頭にあると語られています。例えば、駐車違反の罰則金が1万5千円、レッカー移動費が1万2千円、計2万7千円なのに対して、市内の駐車場は1回に500円~1000円なので、3か月引っかからなかったら「罰金を取られるほうが得や」というのが大阪人の思考法です。
この損か得かという思考法はお金ばかりではなく、時間にも見ることができます。つまり、速ければ速いほうが得という風に考えます。例えば信号の場面で、大阪では赤から青に切り替わる4.92秒前でほとんどの車は停止線を超える見切り発車(フライング)をします。これは、「地域文化特性と運動行動」によれば各国の都市の中で断トツの1位です。ちなみに2位の東京は1.84秒前で、大阪の数字の異常さは圧倒的です。ロンドンは実に0.37秒前に過ぎません。この現象は車だけではなく、歩行者にも同じことが言えます。横断歩道で青信号になるまで一歩も動かずに待つ人は、大阪では全体の10.5%しかいないのに対して、東京では47.3%の人がきちんと待ちます。大阪で一番有名な横断歩道であるJR大阪駅東口と阪急百貨店との間の横断歩道には、赤信号になると「あと何秒」という信号待ちの待ち時間が表示されますが、あと10秒で人々は動き出します。

こうした「早い」「速い」が得になるという思考からは、物事の合理性を追求する志向が生まれます。その象徴が電車の自動改札機や自動券売機です。自動改札機を日本で初めて取り入れたのは大阪の阪急電車の北千里駅に設置された立石電機(現在のオムロン)製の10台で、1967年のことです。阪急大阪梅田駅の3階改札口には、自動改札機が43台ずらっと並び、その数は日本一で、その光景は壮観です。

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