薬物依存

2003年頃だったと思いますが、大阪に帰ってきた当初、私はうつ病とアルコール依存症の他に薬物依存症も持っていたため、大阪ダルクに1か月ほど通所していました。一般の人は、薬物依存と聞いて、覚醒剤などの違法薬物を思い描くと思いますが、依存性のある薬物は以下のように多岐にわたっています。あまり意識はされていないと思いますが、お酒も立派な依存性薬物です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大阪ダルクは大阪市の精神障害者小規模作業所として認可された薬物依存症専門のリハビリテーションセンターです。毎日グループミーティングを行いながら薬物依存から回復したいと望む依存症者が集まっていて、プログラムの核となるのが、1日2回大阪ダルク内で行われるグループミーティングであり、その手法及び内容は、NAの中身にほぼ準じています。基本プログラムは1日3回のミーティングであり、3回目の夜のNA(他の自助グループも含む)ミーティングに参加することを習慣化することが、ダルクのプログラムの最大の目的になっています。私の主治医はダルクやNAはあまり意味がないと言っていましたが、その点では私も同感です。しかし、ダルクやNAで回復している人もいるのも事実で、効果は人それぞれかも知れません。
NA(ナルコティクス・アノニマス)は、薬物によって問題を抱えた仲間同士の非営利的な集まりで、その点ではアルコール依存症のAA(アルコホーリクス・アノニマス)と同様です。しかし、AAと比べると圧倒的に若年者が多かったです。NAの日本公式サイトによると、メンバーは互いに助け合い、クリーン(薬物を使わないで生きる)でいるために定期的に仲間と会うことによって回復しているアディクト(薬物依存者)であると定義されています。実際には薬物、特にシンナーを常用してNAに通っている者もいて、精神的には安定していない人間も存在していました。
違法薬物については、違法なので、所持や使用をすると司法の場で裁かれることになりますが、今の世界の趨勢は、日本が厳罰化を推進しようとしているのとは反対に、処罰よりも治療・回復に重点が置かれています。司法の現場ではドラッグコートやハームリダクションが重視されていて、日本の法律家の間ではダルクが高く評価されています。ドラッグコートやハームリダクションについては、機会があればこのブログでも紹介しようと思っています。

 

わが国の薬物依存臨床における中心的な依存性物質は覚醒剤であり、これまで薬物依存に対する治療や支援は覚醒剤乱用者を中心に議論されてきました。しかし、違法薬物ではなく、医療者にとって身近な医薬品を原因とする薬物依存が近年増加しています。
例えば,精神科医療施設における薬物依存患者を対象とする全国調査によれば、睡眠薬や抗不安薬(主としてベンゾジアゼピン系薬剤)といった処方薬や、咳止め、風邪薬といった一般用医薬品を乱用し薬物依存となる患者が覚醒剤に次ぐ患者群になっています。一般用医薬品(以下,市販薬)とは処方箋なしでも薬局やドラッグストアで気軽に購入できる市販薬のことであり,カウンター越しに販売される医薬品という意味から,OTC薬(Over The Counter Drug)とも呼ばれています。また、救急医療の現場からは、市販薬による過量服薬も報告され、市販薬の乱用が依存や中毒へと問題が拡大している様子がうかがわれます。

 

 

 

 

 

 

薬物依存の対象となる市販薬は、主として鎮咳去痰薬、総合感冒薬、解熱鎮痛薬、鎮静薬の4種類です。鎮咳去痰薬や総合感冒薬には、例えばメチルエフェドリン(覚醒剤と同様に中枢神経の刺激作用)やジヒドロコデイン(オピオイドと同様に中枢神経の抑制作用)といった依存性物質が含有されていることがあります。一方,解熱鎮痛薬や鎮静薬には鎮静効果のあるブロモバレリル尿素が含有されていて、ブロモバレリル尿素は、依存性があるだけではなく、過量服薬の危険性があり、海外では医薬品に含有されていないにもかかわらず、日本の市販薬には依然として使用されています。
一般的に市販薬に含まれる成分の薬理効果はそれほど強くはありません。しかし、市販薬による薬物依存患者は驚くような量を使用していて、ある患者は、毎日のように252錠(3瓶)の鎮咳去痰薬を一気に飲んでいたそうです。この市販薬にはメチルエフェドリン(アッパー系)とジヒドロコデイン(ダウナー系)が混在していることから、いわばコカインとヘロインを混ぜて使用するスピードボールのような状態になっています。さらに、この医薬品にはカフェインも含有されており、その含有量は252錠で1890 mgにも上ります。これはカフェインの中毒症状が出ても不思議ではない量です。それぞれの成分との因果関係は不明ですが、市販薬の乱用に伴って、食欲不振、体重減少、倦怠感、無気力、不眠、希死念慮などの副作用が報告されています。
市販薬を乱用するとどうなるかというと、京都新聞が取材していましたので、引用します。

東京から関西に引っ越してきたアヤコさん(46)=仮名は、夫が市販薬の依存症だそうです。「1日60錠くらいかな、とにかく何十錠も飲むの。一日中飲んでいる。胃腸薬や下剤やサプリなんかも含めて12種類くらい、ラムネ菓子を食べるように」。夫は2年前から、沖縄の回復施設に入所しています。たぶん、沖縄ダルクでしょう。
市販薬で興奮状態になった夫は「養ってやっているのをありがたく思え」「お前のせいだ」と言葉の暴力をふるい続けました。数時間、激高し、薬の効果が切れてくると、罪悪感で落ち込む。摂取する市販薬で夫の症状は違っていました。
禁断症状で、眠る夫の体がバッタのように飛び跳ね、うわ言のように「止めてくれ」とつぶやくようになり、多量摂取の副作用で腸閉塞を発症し、結局は入院することになりました。
アヤコさんの心は疲弊していきましたが、夫婦だからと耐えたそうです。当時の自分の姿を、アヤコさんは少しうつむき、言葉を探しながら、ゆっくり語ったそうです。「ずっと怒っていた。怒っている自分のことも責めていた」とつぶやいています。

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